マーケティング職の年収を戦略的に高める方法【おすすめ書籍】

書評

なかなか年収が上がらない、年収が低いまま停滞していると悩むマーケターに、ぜひオススメしたい本があります。

それがこちらの、「マーケティングの仕事と年収のリアル」です。

本書では、マーケティング職に特化して、どのような仕事の種類があるのか、そしてどのようなキャリアステージがあるのかを解説した本という点で、非常に稀有な類の本です。「キャリアプランの考え方」について伝える書籍は世の中にごまんとありますが、マーケティング職のそれについて限って伝える書籍というのはなかなか珍しいのではないでしょうか。

そもそも年収が1,000万を超えるマーケターは一握り

なぜマーケターの給与が低いのか。

著者曰く、年収が1,000万を超えるマーケターは一握りしかいないといいます。そして、その一握りの人たちは、電通や博報堂のような一部大手広告代理店や、事業会社でも一部の外資グローバル企業にいます。そうでない人たちは、希少なスキルを持つスペシャリストや、事業数値に責任をもつ部長クラス以上でなければ、1,000万は到達できるラインではないといいます。

広告代理店や一部外資系企業であれば、社内評価さえ抑えておけば昇格・昇給を見込むことができます。日々の仕事に真面目に向き合い、周囲と良好なコミュニケーションを取ることに尽力することが重要です。中長期的なキャリアはもちろん考えておくに越したことはありませんが、キャリアを考える目的は年収を上げるためではなく、自己実現のためということになるでしょう。

そもそも広告代理店や一部外資系企業は、マーケティング職を専門職として扱ってくれるところに違いがあると著者はいいます。すなわち、マーケターとしてのキャリアプランを一定程度会社が考え、それに必要な教育プログラムを準備してくれる。一方の国内事業会社の多くはマーケティング職を専門職とはみなさず、容赦無く関係ない部門に配置転換を行ったりします

すなわち、大手広告代理店や外資グローバル企業の高給取りではない私たちに求められるキャリア戦略は、

  • 希少なスキルを持ったスペシャリストを目指す
  • 事業数値に責任をもつマネジメント・部長クラスを目指す

という2つしか残されていないということです。

もう一点、給与を高める上で重視したいのは、会社の財務体質です。結局、一人当たりの粗利が給与の原資となるサラリーマンの世界。財務体質に余力がある企業の方が、給与は高いに決まっています。自身のキャリアを考える上では、重視したい観点です。

希少なスキルを持ったスペシャリストか、数値責任をもつマネジメント
高年収のためには2つの選択肢しかない!

6つのキャリアステージとスペシャリストの3つの選択肢

著者は、マーケティングのキャリアを6段階に分けます。

ステージ1マーケティング業務の見習い
ステージ2特定業務の担当者
ステージ3特定業務の専門家(スペシャリスト)
ステージ4マーケティング施策の統合者(ブランドマネージャー)
ステージ5ブランド・マーケティング全体の責任者(CMO)
ステージ6マーケティングに強い経営者(CEO)

まずは見習いからはじめ、業務担当・専門家へとキャリアアップをしていきます。

見習いでは、議事録作成などの基礎的な仕事を身に付けるとともに、マーケティングの基礎を俯瞰できる入門書をオススメしています。

業務担当の段階では、専門知識を蓄積するとともに、業界トレンドを把握することを重視します。一人で業務が行えるようにするのみならず、様々なケーススタディを自分の手札として蓄積していくのです。

専門家・スペシャリストの段階では「再現性」が重要となります。マーケティングの業務は複雑で、多岐にわたり、ときに最適な打ち手が何なのかが全く検討のつかない場面もあるでしょう。しかし、スペシャリストは仮説を持ち、「どのような手段を活用すればどのような結果が得られるのか」についての算段があります。

中でも、ステージ3の「スペシャリスト」になった段階で、転換点があると著者はいいます。

スペシャリストには、次のキャリアステップとして3つの選択肢があります。

  • 高レベルのスペシャリスト
  • 複数領域のスペシャリスト
  • マネジメントにシフト

ここでどのようなキャリアを選択するか、それはその方の適性次第ですが、どの選択にもリスクがつきまとうことには注意が必要です。

スペシャリストは特定領域の専門家としての活躍が期待されますが、その領域の市場価値が下がってしまうリスクがあります。一方のマネジメントは、ポストがなかなかないというリスクや、適任者として認められないリスクがあります。

多くの方は、マネジメントにシフトするというキャリアプランを描いているのではないかな、と個人的には思うのですが、残念ながらその道は簡単ではないと警鐘を鳴らすのがこの本でもあります。

しかし、マネジメントにシフトし、いずれCMOやCEOになるために必要な要件も示してくれるため、一定の羅針盤として機能する一冊になっているのではないかなと感じています。

定期的にキャリアプランを見直すきっかけとして

冒頭にお伝えした通り、本書は”マーケターの”キャリア論という点で非常に稀有な一冊です。マーケティング一本で今後もキャリアを進めていきたいという方には、必携の一冊だと思いますし、手元に持っておいて、定期的に読み直すことは非常におすすめです。

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