BtoCだけでなく、BtoBにおいてもWebマーケティング活用の重要性が増しています。
BtoBは、「法人」に対して営業を行う必要があるという点で、BtoCとは大きく業態が異なります。「個人」ではなく「法人」がモノやサービスを買うということ。それは、一人の個人ではなく、複数の個人が購入の意思決定をするということです。
そのため、購入するかどうかの判断は、個人と比べて合理的になりがちです。もちろんワンマン社長の場合事情は異なるかもしれませんが、企業が購買活動を行うときは、個人的な感情や満足だけでは決裁されません。企業の利益に貢献するのか、この一点のみで判断されるのがBtoBビジネスの常です。
検討期間が長くなりがちであることもBtoBビジネスの特徴です。特定の商品が企業の利益に貢献するのかどうかを判断するのは、容易な行為ではありません。様々な比較検討を行った上で、最もベストだと思われる選択肢を採るにはそれなりの期間が必要です。
しかも、ある担当者がその商品を「欲しい」と思っても、その担当者の上司、上司の上司、場合によっては更に上の役職者の合意を得なければ購買行為は決裁されません。
BtoB Webマーケティングの教科書
それほど複雑なBtoBビジネスにおいてWebマーケティングを実践したいときに手に取っておきたいのが、「BtoBウェブマーケティングの教科書」です。
本書は、会社のホームページ担当・広報・PRになったらとりあえず読んだ方がいいよ、と私の部下にも薦めている一冊です。自社のホームページを一度じっくり回遊した上で、この本を読み進めていくと、改善点のアイデアがたくさん浮かぶようになっており、やりたいことがたくさん積み重なっていく。それくらい基礎が分かりやすく詰まっている一冊です。
なぜBtoBにおいてWebマーケティングが必要なのか
BtoBビジネスにおいて、Webはどのように貢献できるのか。Amazonでモノを買うかのように「ポチッと」購買が即決されないBtoBビジネスでは、少なくともWebを通じてものが売れるいうことは少なそうです。
では、なぜBtoBにおいてもWebマーケティングが必要とされているのでしょうか。それは以下の3点に集約することができます。
顧客にとって、情報収集が容易になったから
昔は一苦労して資料やカタログを取り寄せたりしたものですが、いまや必要な情報の多くはWebに掲載されています。基本的な商品情報を知るために営業と会う必要もありません。Webに掲載されていない情報を知りたい、例えば価格を知りたいといったときに初めて営業担当を呼ぶようになるのです。
営業が迷惑がられるようになったから
ただ自社の製品やサービスを売り込むだけの営業は、迷惑な存在です。今や、そういった役割はWebマーケティングが担ってくれることを、お客様は期待しています。
むしろ営業に期待される役割は、お客様の課題を明確化し、そしてそれを解決に導くコンサルタントです。私自身ソリューション営業の経験がありますが、世の中のあらゆる営業というのはソリューション営業という役割に収斂されていくのだと思っています。
Webで存在しないことは、この世に存在しないということだから
現実に存在するものは、全てWeb上でも存在するということが当然の世界になりました。リアルで何か欲しいものがあったとしても、それをWebで検索しても出てこないということは、「これは何か怪しい商材なのかな?」という疑いすら持たれかねません。
もはや、Web上で存在しないということは、リアルにも存在しないということとほぼ同義であると言っても過言ではありません。Webできちんと存在感をアピールするということは、顧客にとって必要な信頼を与えるための最低限の手段となったのです。
BtoBでWebマーケティングを行う目的は2つだけ
BtoCにおいて、Webマーケティングの目的は明確です。それは、そのモノを買わせるということです。宣伝活動そのものも大事ですが、それはあくまでWeb上で購入を決済して欲しいからです。
しかし、BtoBのWebマーケティングの世界において、Web上で購入が決済されるということは稀です。法人が購入の主体である以上、Webを見ている個人が決裁権限を持っていることはなく、きちんと社内で検討してからそのものを買うようになるからです。
実際にそれを買おうと意思決定をしてからも、担当者が稟議書を書いて、それが社内の関係部門に承諾されてからでないと購入にいたることはありません。
では、なぜBtoBでWebマーケティングを行うのか。その目的は
- 見込み顧客を発掘すること
- 見込み顧客を育てること
の2つしかありません。
この2つの目的を達成するために必要な手順を、本書は以下のようにまとめてくれています。
BtoB Webマーケティング実践の4つの手順
0から完璧なWebマーケティングの仕組みを作り上げることは不可能であるのみならず、莫大な工数がかかります。
そこで、本書はまず既に社内にある様々な資産を活用することを薦めます。そして、お客様から問い合わせをもらう「コンタクトポイント」から逆算してWebマーケティングの全体設計を行う方法を提示してくれます。
手早く実践に移るためには、現状保持している「営業資産」をフル活用できるかどうかが重要です。過去に使った提案資料やイベントで製作したチラシなど、過去の営業資産をフル活用することで、コンテンツ作成の手間を大幅に削減することができるのです。(STEP1)
それらを踏まえた上で、今度はお客様の立場にたち、「どういったコンテンツであれば問い合わせをもらえるか(STEP2)」「どういったコンテンツであれば読んでもらえるか(STEP3)」「どういったコンテンツであれば集客を見込めるか(STEP4)」という3点を設計・実践していくのです。
BtoB Webマーケティング実践のステップ1:現状把握
集客のためのリストや、コンテンツとして利活用できる資産を棚卸しします。
後々の活用を見込み、
- プロモーション資産
- コンテンツ資産
に分類していきます。
プロモーション資産 | 集客に活用できそうな社内外の顧客リスト例)セミナー参加者、名刺データ |
コンテンツ資産 | コンテンツとして利用できる資料 例)提案資料、社内資料 |
BtoB Webマーケティング実践のステップ2:コンタクトポイントの設計
いわゆる「お問い合わせ」ページを設計する手順になります。
見込み顧客を発掘することがBtoB Webマーケティングの重要な目的の一つである以上、まずはこの「お問い合わせ」ページから逆算しWebマーケティング施策を考えていくということには一定の合理性があります。
しかし、漠然とした「お問い合わせ」ではなく、
- ご依頼・ご相談
- 見積もり依頼
- テスト機貸し出し
- カタログ請求
- 資料ダウンロード
などと窓口ごとに明確な目的を定めることがポイントになってきます。そちらの方が、お客様が自身の情報を入力するインセンティブが働き、コンタクトの量も増加することが見込めるからです。
BtoB Webマーケティング実践のステップ3:コンテンツ設計
次に、コンテンツ制作に取り掛かります。
自社の商品のスペックや機能、品質、価格、サポートなどの「売り込み」のためのコンテンツだけでなく、顧客事例やケーススタディ、外部からの評価、様々なノウハウなどを含めた総合的な営業力でも勝負する必要があります。
配慮すべき点があるとすれば、営業が訪問する際に持参するコンテンツとの重複を避けるということです。そうしなければ、営業からの反感を買ったり、あるいは、営業をお客様がありがたがらなかったりすることもあるでしょう。私自身の経験でも、あまりにもWebに情報を出しすぎたあまり「もっと詳しい資料はないの?」とお客様につけこむ隙を与え、あまり出したくない情報を出さざるを得なくなったケースというものを知っています。
価格をWeb上に出しているケースなどは、なおさら注意が必要です。しかし、戦略的に交渉できる領域を担保しておく、例えばWeb上は高めの値段設定を記載しておき、そして営業訪問時に「特別値引き」として購入を促すという手法は有効に働くでしょう。
BtoB Webマーケティング実践のステップ4:集客
問い合わせの窓口とコンテンツを設計したのちは、いかにしてそこに人を集めるのかという集客のステップを考える必要があります。
本書ではリスティング広告やSEO、ディスプレイ広告、リマーケティング広告、サイト広告など幅広い集客の手順を紹介してくれています。
集客の方法が多いからこそどの方法がベストなのかという選択は容易ではありませんし、また、複数の集客の手段を取った結果どれも中途半端に終わってしまうというケースも少なからずあるでしょう。しかし、結局はトライアンドエラーをいくら繰り返せるかということがマーケティングの世界では重要なのであり、それは各企業にて実践してみないとわからない点がたくさんあるでしょう。
たくさんの施策を打って成功パターンを見つける
以上の手順を採用することで、一通りのWebマーケティングの立ち上げを行うことができるでしょう。しかし、最初から完璧なWebマーケティング戦略が実行できるなどということはありえません。そもそも、完璧なWebマーケティングといえる状態というのは、この世にあるのでしょうか。
一度実行して軌道に乗ったアクションプランでも、まだまだ改善点がある、もっと良くすることができるという指摘が幾分にでもできるというのがマーケティングの仕事の辛さでもあり、楽しさでもあります。
自社の改善点をもっと見つけていきたいという方は、ぜひ本書を手に取ってみてはいかがでしょうか。
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