マーケターのキャリアプランは「3つの軸」を基準に考える

キャリア

戦略的にキャリアプランを描くことなく仕事をしていると、なんとなくのキャリアを築いてきたがために中途半端な人材になってしまい、市場価値が高まらないまま40代・50代を迎えてしまうというリスクがあります。とくにマーケティング職においては、業務の幅が非常に広く、また専門分野も非常に多いことから、そのリスクはますます高いように感じられます。

しかし、マーケティングのキャリアプランを明確に描くというのは困難です。

  • 一度、広告代理店でキャリアを積んだほうがいいかな?
  • MBOとかとったほうがいいのかな?
  • 今の自分の実力でどこまで通用するのだろうか?

このような悩みは尽きないと思います。

では、マーケターはどのように自分のキャリアを考えれていけば良いのでしょうか。

マーケティングのキャリアを考える軸

まず、キャリアプランを立てる上で重要なのは、キャリアを考える軸です。

軸がなければ、なんとなくの願望やイメージから、将来のキャリアパスを描くことになってしまいます。そうすると、大した根拠もないのに

学生
学生

広告代理店に就職して、専門的なスキルを描くぞ!
(なんだかキラキラしてそうだし)

20代
20代

MBOをとってどこでも通用する人材になろう!
(あまり将来やりたいことは明確ではないけれど)

30代
30代

大手企業でそれなりにスキルを身につけたので、ベンチャーでバリバリ活躍するぞ!
(大手企業出身なんだから、引く手数多に違いない)

と、楽天的なその場しのぎの選択をしてしまうリスクがあります。

マーケターのキャリアを考える軸として、以下の3つが重要となってきます。

  1. 事業会社か、支援会社か
  2. 大手企業か、ベンチャー企業か
  3. スペシャリストか、マネジメントか

【キャリアプランの軸1】事業会社か、マーケティング支援会社か

事業会社は、商品・サービスの製造・販売を生業とします。製造業や小売業、建設業などほぼ全ての会社は「事業会社」であるといえます。一方の支援会社は、それらの事業会社に対してマーケティング支援のサービスやITシステムを提供します。

事業会社のマーケティング

事業会社のメリットは、マーケティングの業務プロセス全体に関わることができることです。市場調査から商品企画、販売促進活動にいたるまでの一連のプロセスを自分で遂行することができるので、大きなやりがいを感じることができるでしょう。


支援会社のマーケティング

支援会社のメリットは、専門性がつくことです。同じ領域・アプローチを多くの企業・案件に繰り返すことで、専門性が短期間で磨かれます。特定の領域、例えばデジタルマーケティングのスキルであるとか、あるいはコマーシャル制作のスキル、イベント運営のスキルなどの深いノウハウが得られるのは支援会社の強みです。

例えばイベント運営のスキルを考えてみます。事業会社に勤めている場合、大規模なイベントは行ってせいぜい年に一度、あとは展示会に出てみたり、少人数制のセミナーを自社で開催したりする程度でしょう。しかし、マーケティング支援会社に所属していた場合、そういったイベント開催のための準備・実行に日々携わることになるのですから、その成長スピードの違いは一目瞭然です。

【キャリアプランの軸2】大手企業か、ベンチャー企業か

大手企業かベンチャー企業か、は多くのマーケターが直面する悩みの一つだと思います。

大手企業の安定も捨てがたいし、とはいえベンチャー企業のチャレンジングな環境も魅力的…。しかし、なんとなくのイメージでは決めずに、それぞれの特性を踏まえた判断をすることが非常に重要です。

大手企業のマーケティング

日本の大手企業では、非常に組織化されたマーケティング組織を目にすることができます。マーケティングの施策一つ一つが統制されており、予算を使うために複雑な上申フローをへなければならないケースも珍しくありません。

そういった手続き面での煩わしさはありますが、一方で、潤沢なリソースを活用できるというのは大手企業のメリットです。順調に出世街道を歩んでいけば、数十人規模の部下を持ち、大規模なプロジェクトを推進するというなかなか得難い経験ができるかもしれません。

ただし、一点、大手企業では注意が必要なポイントがあります。

それは、参入障壁が高い業種です。参入障壁が高いに入ると、マーケティングのニーズそのものがあまりないケースもあります。例えば鉄道会社を考えてみましょう。これから新たな鉄道会社を起こして急成長させて、JRを倒してシェアno.1になるぞ!と意気込む起業家がどれだけいるでしょうか。あるいは、東急電鉄がこれから西日本への進出を目論見ることがあるでしょうか。

あまり競争のない市場に身を置いてしまうと、マーケターとしてのキャリアはあまり磨かれないリスクもあるので、注意が必要です。

ベンチャー企業のマーケティング

未だあまり世にしられていない会社・商品の社会的な認知を高めるという非常に魅力的な仕事ができるのが、ベンチャー企業のマーケティングの仕事です。

しかし、チャレンジングである反面、大手企業のマーケティングの仕事と比較すると圧倒的に困難で成功率の低い仕事であるということも認識しておかなければなりません。

ベンチャー企業が開発する商品は非常にニッチです。しかも、ブランドも未だありません。それを0から作り上げていくためには、並大抵の努力では敵いません。失敗するリスクも存分にあるということを自認しておきたいものです。

しかし、難しい経験を積んだからこそ得られるスキルが多いのもまた事実です。さらに、その困難を乗り越えて世に大ヒットを起こすことができれば、あのイノベーティブな製品を大ヒットさせた有名マーケターなどという社会的な認知をあなた自身が得ることもできるかもしれません。

そこまでいけば、キャリアとしては文句の付け所がありませんね。

【キャリアプランの軸3】スペシャリストか、マネジメントか

何か専門領域に特化したスペシャリストになりたいのか、それともいずれはマネジメントに移行して、自分の手を動かすのではなく周囲を動かすことでマーケティング戦略を実行するような立場になりたいのかを考える必要があります。

これは、完全に人それぞれの向き・不向きの話になりますので、自分の性格や適性と十分に対峙して考えていく必要があります。

しかし、先に申し上げておくと、一般的に年収が高くなるのはスペシャリストよりもマネージャーです。スペシャリストは対応可能な範囲が狭いのみならず、専門スキルが今後不要になる可能性だってあるからです。

一方のマネジメントは汎用的なスキルです。そして、企業がビジネスを行なっていくにあたり、マーケティングという役割がなくなることは考えにくいものです。そのマーケティングのマネジメントを務めることができるというのは、非常に貴重な人材であることの証です。

マーケティングのスペシャリストとしてのキャリア

とはいえ、だからといってみんながみんなマネジメントを目指すべきかというと、そうとは限りません。

スペシャリストは、いずれかの領域に特化してマーケティングを行います。重要なのは、この領域の選択を誤らないことです。

たとえば新聞広告のスペシャリストになったとします。新聞は年々発行部数が減り、読者がどんどん少なくなっているメディアの代表格です。そんな時代に、新聞広告のスペシャリストです、高給で雇ってくださいといっても、なかなか苦労しそうです。

一方で、近年給与がうなぎのぼりなのはデータアナリストなどのデータを扱う仕事です。広告や販売促進活動がデジタル化したことによって、多くの指標が定量化できるようになった。そして、今、その定量化されたデータをうまく読み解ける人材が不足しているということなのです。

こういった時代の変化を察知し、スペシャリストでありながらきちんとニーズのある専門領域をずらしていける人材というのは、今後も成功するでしょう。いずれにせよ、日々きちんと自分のスキルを見直し、そして研鑽を積むことができる人材というのは、職種を問わず市場価値の高い人材であり続けます。

マーケティングマネージャーとしてのキャリア

マーケティングマネージャーというと響きはいいですが、その内実はなかなかに泥臭いものがあります。

まず、マネージャーである以上、多くの社内調整業務に時間を取られるようになります。そして、マーケティングは効果測定が非常に困難な仕事でもあります。

だいたいのマーケティング施策にはコストが伴います。そのコストが売上に繋がっていれば良いのですが、そのコストと売上の相関関係を証明するのは至難のワザです。

たとえば、車メーカーにおいて、テレビCMを打ったことで売れた車の台数を性格に計算することができるでしょうか。

こういった障壁を乗り越えるために、経営陣と良好な関係を築き、そしてマーケティング活動に対して十分な理解を得ること。そういった業務が非常に重要になってくるのがマーケティングマネージャーの仕事です。

もちろん、とはいえマーケティング全体を俯瞰して必要な企画を考える喜びというのはマネージャーであれど不変です。

マーケターのキャリアプランの3つの軸を踏まえて

以上の3つの軸を考えたときに、自分はどういったキャリアパスを描くのか。図式化すると、以下のような8つの「箱」で表現することができます。

最終的にはどの「箱」に入りたいのかを考え、キャリアプラン上のゴールとするだけでなく、自分は今どの「箱」に入っており、そしてどういう経路で理想の箱に入るのかを考える必要があります。

特に、対角線上の移動(例えば、ベンチャーの支援会社のスペシャリストから大手の事業会社のマネージャー)はとても困難です。一足飛びにそういったキャリアチェンジができるケースは稀でしょう。自分の目指す「箱」に向かって、戦略的に転職や昇進を用いながら進んで行くことが肝要です。

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