マネージャーを務めるということは、「いかにして自分の組織の成果を最大化するか」ということに責任を持つということです。しかし、どのようにして成功をもたらせばいいのか、そのプロセスに原則はないのか。そういった問いに答えるために、「成功の循環モデル」を今回はご紹介したいと思います。
成功の循環モデルとは、どんなプロセスか
成功の循環モデルとは、組織が継続して成果を上げていくための仕組みを表したものです。マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授が提唱しています。
この図には、時計回りの《グッドサイクル》が描かれていますが、反時計回りの《バッドサイクル》も存在します。
成功するプロセスを表すグッドサイクル
まずは、関係の質を高め、お互いを尊重しあうような関係を築くことからグッドサイクルは始まります。関係の質が高まると、組織の各メンバーの立場や意思が尊重され、その組織に所属することの安心感や、心地よさを得ることができます。
このような良い関係性が構築されると、思考の質が高まります。
いい関係性ができているので、その組織に対する忠誠心や改善意欲が自ずと湧き、構成員はモチベーション高く働いている状況だということができるでしょう。組織の構成員は個性を発揮し、その自由な発想を活用することで、良いアイデアが生まれるようになります。
その結果としての行動の質が生まれ、最終的に結果の質が向上、良い成果が出ることでまたこのお互いの関係性が強固なものとなるという理論です。
失敗するプロセスを表すバッドサイクル
関係の質が悪化すると、メンバーは考えることをやめるため、思考の質が低下するとされています。お互いがお互いを敵視したり、あるいは恐れ慄いているような組織においては、その構成員の思考は自ずと内向きになるものです。抑圧された関係の中では、いいアイデアも出ないというのは納得できます。例えば、あなたのすること全てに対していちゃもんをつけてくるパワハラ上司のもとでは、怒られない程度の最低限の仕事をして、とっとと帰宅したいと思うのは自然なことでしょう。
そうすると、行動の質が低下して成果が上がらなくなる、すなわち結果の質が低下するのです。成果が上がらない組織の関係は、もっと悪くなるでしょう。この悪循環こそがバッドサイクルです。
「成功の循環モデル」がプロセスとして機能する前提条件
もちろん、非常にシンプルなモデルであるため、
関係性が良くなったからといって成果があがるだなんて、そんな簡単な話があるもんか!
と思われるかもしれません。
私自身、いくら関係性がよくても、その前提として、組織の構成員の思考の質・行動の質が高い、ということがなければ、この理論は成立しないと考えます。一人一人が自立したビジネスマンとして、良いアイデアを考えたり、行動計画をきちんとたてられる人物でないと、成功の循環モデルは成り立ちません。
さも当然のことのように思えますが、組織が行き詰まった時に取るべき対策を考える時に、この前提を踏まえていないと誤った方向に組織をリードしてしまいかねません。そもそもの素養として「十分な思考の質が担保されているか」という視点は忘れないようにしておきたいものです。
関係の質を高めるためにすべきこと
関係の質を高める、相互の尊重を促すための手法の例としては、1on1ミーティングがあげられます。
成果主義的な色合いが強いと言われる欧米の人事制度においても、近年では結果の質だけでなく、思考の質や関係の質を評価するような制度が取り入れられつつあります。特に、従来の半期に一度の目標管理・業績管理制度を取りやめ、そして代わりに、適宜上司がフィードバックするによって人事評価を行うような企業も出始めています。
「結果」や「行動・思考・コンピテンシー」を問う評価制度は今も一般的ではありますが、いずれ、社内の人間関係そのものについても、評価がなされるようになる時代は近いのかもしれません。
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