グーグル、アマゾン、ツイッター、ウーバー。IT業界を代表する巨人たちが軒並み取り入れていることで、非常に話題になっているOKR。本日はOKRについて解説するとともに、そのメリットをご紹介した上で、OKR運用のオペレーションに取り入れるべきとされるCFRについて紹介します。
OKRとは
OKRとはObjectives and Key Resultsのことであり、直訳すると「目標と主要な結果」という意味になります。目標管理の手法の一種ですが、多くの企業で取り入れられているいわゆる「MBO(Management by Objectives)」とは異なる点も多く、特徴的です。
今回は、そのOKRとその特徴的なポイントについて解説していきます。
Objectives:目標
まず、Objectives(目標)では、「何を達成すべきか」を定義します。
重要で、具体的で、行動を促すもので、人々を鼓舞するような目標であることが重要です。
Objectives(例)
優秀な人材が入社したくなり、定着する社風・文化を醸成する
Key Results:主要な結果
Key Results(主要な結果)は、目標を「どのように」達成しつつあるかをモニタリングする基準です。
具体的で、時間軸が明確で、意欲的で、現実的なことが求められます。もちろん、目標の測定基準であるため、測定可能かつ検証可能であることが必要です。
Key Results(例)
- 全ての募集要項を書き直す
- 面接官全員に研修を実施する
OKRのメリット
OKRはなぜこれほどまでに注目を浴びているのでしょうか。それは、働く個人にとっても、企業にとっても好影響を及ぼすからです。OKRは個人の「やりたいこと」や「やりがいを感じること」と、企業にとっての「達成すべきこと」の両者のベクトルが合うようになるのです。
OKRの威力を順番に見ていきたいと思います。
優先事項にフォーカスすることができる
OKRを作成することで、何が重要で、何が重要でないのかが明確になります。重要じゃない仕事は、OKRの「O:目標」からは省かれるでしょう。そして、日々の仕事の進捗は「KR:主要な結果」でモニタリングされますから、見当違いな仕事をしてしまう(あるいは他人にさせてしまう)リスクは、最小限に抑えることができるようになっています。
とくにOKRの「O:目標」はなるべく少なくすることが推奨されています。目標の数はできるだけ絞り込み、3~5個以内にすべきであると、OKRの提唱者アンディ・グローブはいいます。
オープンな目標が連携とチームワークをうむ
OKRのプロセスにおいて、各従業員の目標は全社に公開されます。
禁煙でもダイエットでもそうであるように、目標は公言することによって達成されやすくなります。目標は公開されることで、達成の確度が高まるというメリットがあるのです。
それだけではありません。目標は公開されることによって、部署を超えた連携・チームワークをうむことがあります。隣の部署の人たちが何を目標に活動しているのかを知ることによって、連携のきっかけをうむことができます。
例えば、先ほどのOKRの例を再掲します。
Key Results
- 全ての募集要項を書き直す
- 面接官全員に研修を実施する
「KR:主要な結果」の中に、「面接官全員に研修を実施する」とありますが、もし同様の課題感をもった社員が面接官の中にいれば、公開された目標をその社員が閲覧することで、「じゃあ一緒に研修プログラムを考えてみようか」なんて流れになったとしても、不思議ではありません。目標を部署の中に閉ざさず、全社に公開することで、部署をまたがったシナジーが期待できるのです。
進捗をトラッキングし、責任を明確にできる
OKRを定めたら、実際にそれをトラッキングします。その進捗に応じて、「KR:主要な結果」をステータスに分けます。
- 青(計画通り)
- 黄(要注意)
- 赤(リスクあり)
当然、青の場合は継続してその施策に臨めば良いですし、黄・赤の場合はやり方を変えていく必要があるということになります。注意すべきなのは、赤(リスクあり)の場合、当初立てた目標に意味がなくなってしまったなんていうケースがあるということ。その場合は、進捗をトラッキングするのを即座にやめ、そのアクションをすぐに停止できるのも、OKRの良いところです。年次の目標管理制度(MBO)では、そうはいきません。
ストレッチ目標を設定することで、驚異的な成果を期待できる
「未達成」が許されない目標管理制度では、立てる目標も自ずと「および腰」なものになってしまうでしょう。確実に達成できる目標を書き、そしてその達成に向けて日々実直にルーチンを重ねていく…。
OKRでは、このような目標管理の手法はとりません。達成が困難そうな目標をあえて設定するのです。
とんでもなく野心的な目標を設定すれば、達成できなくても何か素晴らしいことを成し遂げられるはずだ
ラリー・ペイジ
野心的な目標だからといって、未達成でいいというわけではありません。もちろん達成に向けて全力を出すべきではありますが、達成困難な目標を掲げた方が、最終的なパフォーマンスは良くなるのです。
最前線の社員にとって、より妥当な目標管理を実施できる
各社員のOKRは、上位下達ではなく、なるべく自身で目標を考え、設定することが望ましいとされています。そうすることで、ビジネスの最前線で起きていることをきちんと踏まえた適切な目標設定がされることが期待されます。現場でなにか突発的なイベントが起きたとしても、すぐに目標を修正してアクションを起こせる権限が現場にあれば、これは機敏性・柔軟性といった観点からもより望ましいものであるといえます。
何より、現場の社員が「軽視」されることなく、一番の貢献者としての従業員の意見を重視してあげることで、彼らのモチベーションもあがりパフォーマンスもあがるというものでしょう。
CFRについて
CFRとは
- Conversation(対話)
- Feedback(フィードバック)
- Recognition(承認)
の頭文字をとった略語で、継続的なパフォーマンス管理を行うための手段であるとされています。
CFRとOKR、四半期目標を組み合わせて使うことで、非常に威力を発揮します。
Conversation(対話)
定期的な1対1の面談のような機会を、きちんと定期的に上司・部下で設けるようにすること。そのなかで、目標設定・振り返りを行なったり、継続的な進捗報告を行なったりします。
従来の目標管理のように、半期・四半期に一度、振り返りのための評価面談を行なっているようでは、敏捷性・機敏性に欠くというものです。
より対話の頻度を高めるために、確実な目標達成をはかることができるのです。
Feedback(フィードバック)
フィードバックにはネガティブなもの・ポジティブなものがありますが、一般的な企業に勤めていると、フィードバックを受ける機会というのは案外に少ないものです。しかし、OKRはフィードバックなしにして達成できないことが多いでしょう。
そもそもOKRで目指している目標は、目指すべき目標なのか?本当にその目標にフォーカスして全心全力で挑んで良いのか?目標の妥当性を検証するために、フィードバックは欠かせません。あるいは、目標を達成するためにより工夫する術を他の人からフィードバックを通じてもらえれば、より目標達成の確度は高まってきます。
Recognition(承認)
同僚同士がおたがいに業績評価をつけあっているかのように、お互いがお互いをきちんと承認し合うことを制度化することを指します。その方法は様々ですが、例えばニュースレターや社内報などを通じて社員が高い成果をあげた事例を共有します。そうすることで、お互いがお互いを承認する頻度を高め、より目標達成の意欲は高まります。
OKRとCFR
OKRとCFRを導入する企業は今も増え続けています。旧来の目標管理・ノルマ管理といった手法が徐々に変革されてきています。なお、たとえOKRを導入していなくても、CFRは重視すべき概念としてより制度化を日本でも進めるべきだといえます。従来の面談管理からは一線を画したCFRーー特にRecognition(承認)については、今後より日本でも広まっていくことを期待しています。人間は誰しも承認欲求があります。承認行為を制度化することで、きちんとこの承認欲求を満たしてあげる。そうすることで、ますます個々人が気持ちよく仕事ができる仕事環境を作ることができます。
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