将来はCMOになってマーケティングプロセス全体を統括したい。マーケティングのマネージャーになって、より裁量を持って仕事がしたい。そういった思いを持っているマーケターも多いのではないでしょうか。
従来のマーケティングマネージャーやCMOの主な仕事は、派手な広告キャンペーンを作成することでした。有名女優を起用して商品を宣伝してもらう。その商材を使ってキラキラした世界観を演出する。そういった仕事のあり方は、もう過去のものとなりつつあります。
今求められるスキルは、将来のビジョンを描く力。そしてそれを実行に移すための、カスタマーエクスペリエンスの設計力と、データドリブンな意思決定力です。
あらゆる商品が「サブスクリプション」の方向に向うなか、企業が重点を起き始めているのは「いかにして売るか」だけではなく、「いかにして使い続けさせるか」ということです。その点で、カスタマーエクスペリエンスの設計力というのは、かなり重要視され始めています。
そして、マーケティングの手法がデジタル化し、定量可能な今、データをきちんと扱うことができるか、そのデータに基づく意思決定ができるか、という力量も問われているのです。
では、どのようにしてこれらのスキルを身に付けていけばよいのか、マーケティングマネージャーを志す人がキャリアで意識すべきことを考えていきましょう。
キャリア1:新人マーケティング担当
新卒で入社し、マーケティング部門に配属されたとしましょう。
経営学部など、マーケティングに関する知識を習得した人たちは一歩リードしているかもしれませんが、そうでなくともあまり気にする必要はありません。まだまだ挽回がききますし、何より座学で学んだことというのは案外に役に立ちません。
このキャリアの段階から次のステップに移るために最も重要なのは、いかに知的好奇心が旺盛かということです。知的好奇心は二つの意味で重要です。
1つは、様々なマーケティングの分野に前向きに取り組むことができるか。
マーケティングは広告運用からコンテンツマーケティング、イベント運営、販売促進の資料作成など、業務がかなり多岐にわたります。これらの幅広い業務を習得するとともに、特定分野のスペシャリストであればなお理想的です。
2つは、マーケティングの対象となる顧客に関心を持てるか、ということ。
顧客に対する深い理解がなければ、マーケティングの施策もその分ぼんやりとした、曖昧なものになってしまいがちです。例えば、化粧品メーカーで中高年の女性をターゲットとする場合。
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30代の女性は、子供がいる場合といない場合で生活リズムは大きく異なる。特にこどもがいる場合は、学校や習い事の送り迎えが多く、外出している時間が多い。その反面、日中は仕事をしている場合もあるので、体温調整に苦労している。夜も家事・育児に追われるので、化粧を落とす時間はなるべく短縮したいだろう…
この二人のどちらが正確なマーケティング戦略を実行できるでしょうか。
「自社がターゲットにしている30代の女性とはどのような生活を送っているのであろうか」というテーマを深く研究し、場合によっては観察に観察を重ねた上で、得られた発想に基づき開発された製品や、マーケティング戦略はそれだけ精度が上がってきます。
このように、新卒入社から数年は、知的好奇心旺盛に、特に顧客をよく知るための活動を重ねることが良いと思われます。マーケティング職への配属であっても、最初は営業マンとして仕事をさせる企業が多いのも、こういった理由なのではないでしょうか。
キャリア2:中堅マーケティング担当
事業会社でマーケティングをやってみると、広告運用、ライティング、SEO、コンテンツ制作など多くの仕事は全て自分でできるという類のものではなく、他社に外注するものが非常におおいことに気づきます。多くの管理スタッフや代理店パートナーをいかに上手に動かすことができるか、そしていかに投資対効果を最大限に引き出せるかが重要な役割となっていきます。
どのチャネルが最も顧客獲得の観点から有効なのか、そういったことが理解できると、「いくらかければどれだけの売り上げを見込めるのか」という非常に希少な人材になり得ます。過去のデータに基づく意思決定を行う力を身につけることで、現実離れした実行計画を立てたり、あまり効果的でない施策を行うといった事態を避けることができるようになります。
そういった経験をもとに、マーケティングプランの全体設計を行うことができるのも、職務の一つです。
運良くポストがあれば、特定ブランドのマネージャーを任せてもらえるチャンスがあるのもこの時期のキャリアの特徴です。ブランドを任せてもらった際は、単なる販売促進の観点からのみならず、ブランディングやカスタマーエクスペリエンス全体の設計までを行う必要があります。
キャリア3:CMO・マーケティングマネージャー
CMO・マーケティングマネージャーは担当者レベルよりも、より全社的な視点を持つ必要があります。
与えられたKPIをただ愚直に追い求めるのではなく、そもそものKPIを設定するところから仕事が始まります。より経営者視点が求められますので、そのKPI設定も達成すべき売り上げ目標から逆算して行うべきと言えるでしょう。
より長期的な視野を持つことも、CMOやマネージャーに求められる特徴の一つです。月々の目標や四半期ごとの目標をただ達成しようと邁進するのではなく、数年間のプランを立てておき、それにコミットすることはCMOの責任です。そしてそのプランを達成するために各部門との調整が必要になりますし、その達成状況に対する説明責任も求められます。
他部門調整や説明責任というとネガティブな響きがありますが、要はいかにリーダーシップを取ることができるか、しいてはいかに周囲が共感できるビジョンを描くことができるかというのがポイントです。
そういったビジョンを描く際には、顧客と密に向き合った経験が新人マーケターの時にきちんと得られているか。そして、そのビジョンを実際に実行に移すためのデータ分析、販売促進からブランディングといった手段が中堅マーケターの時に経験できているかという点が非常に重要になってきます。
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