今回は、論理的な文章の書き方を皆様にお伝えします。
企業で働く以上、論理的な文章を書くスキルは必須です。提案資料、企画書、事業計画書、稟議書。あなたのアイデアがどれだけ素晴らしくても、文章が論理的でなければ見向きもされないことになります。そこで、今回は誰でも論理的な文章が書けるようになるテクニックを体系的にお伝えします。
論理的な文章構成の全体像
論理的な文章を書くためには、断片的なコツではなく、守るべき「構成」を理解する必要があります。 論理的な文章は、以下の「構成」を守ります。
- 文章の目的
- 序論
- 文章を読者が読むべき理由
- 文章を読むために必要な予備知識の提供
- 本論
- <A>について
- <A>の概要
- 《A-1》について
- 《A-1》の概要
- 〔A-1-1〕について
- 〔A-1-2〕について
- 〔A-1-3〕について
- 《A-2》について
- 《A-3》について
- <B>へのつなぎ
- <B>について
- <B>の概要
- 《B-1》について
- 《B-2》について
- 《B-3》について
- <C>へのつなぎ
- <C>について
- <C>の概要
- 《C-1》について
- 《C-2》について
- 《C-3》について
- <A>について
- 結論
- 本論の要約・重要ポイントの列挙
- 本論の重要性の強調と、将来の発展への道
文章の目的:冒頭に文章全体の目的を宣言する
まずは、文章の目的を宣言します。
これを、文章の冒頭に記載します。この「目的宣言」のメリットは2つあります。
一つは、読者が「この文は何について書かれているのか」をすんなり理解できることです。
もう一つは、書き手自身が「自分は何について書こうとしているのか」を明確にできることです。人が何か文章を書き始めるとき、その人は、案外「自分が何を書こうとしているのか」を理解していません。
まずは自分自身が向かうべき「目的」=<ゴール>を明確に宣言することで、あとは一直線にその<ゴール>に向かって必要な要素を書き加えるだけです。目指すべき<ゴール>が明確なので、論理が紆余曲折したり、支離滅裂な文章を書いたりすることは避けることができます。
序論:なぜ読者がその文章を読むべきかを説明する
まずは文章の目的を宣言した上で、なぜ読み手がその文章を読むべきなのかを主張します。
序論の書き方次第で、その文章が読まれるか読まれないかが決まると言っても過言ではないでしょう。文章の読み手は、とても忙しい人を想定すべきです。この前提を認識しているかどうかで、その文章の出来は大きく変わります。
とても忙しい人は、とても忙しいので(そのまんまですが)、やるべき仕事とやるべきでない仕事の優先順位をつけます。残念ながら、「不要な仕事」と判断された仕事は捨て去られますし、「不要な読み物」と判断された文章は読まれません。
文章が「不要な読み物」と判断されないように、序文では、読み手がなぜあなたの文章を読むべきなのかを強調しましょう。
読み手に予備知識が必要な場合は、その提供もあわせて行います。例えば本論の前提となる「これまでの経緯」「過去のヒアリング結果」「現状起きている問題」などの概要を、まずはまとめる。そうすることで、読み手にも非常に感謝されます。
本論:概要からはじめ、細部におりていく
本論の書き方は、その文章の種類によって様々です。しかし、様々な文章に共通して守るべきルールがあります。それは、概要から記載し、徐々に細部におりていくということです。
この重要性がなかなかピンと来ない方がいますので、こちらの地図をご覧ください。
これはどこでしょうか?円形の道路があり、「チャールズ一世騎馬像」と書いてありますね。
もう少しズームアウトしてみます。
そろそろ気づかれたかたもいらっしゃるかもしれません。地下鉄のマークが大ヒントです。トラファルガー広場という文字も見えます。
「ロンドン」の文字が出てしまいました。そうです、これはロンドンの中心部だったのです。
地図については、大きな絵から徐々にズームインしていかないと迷子になるということを人は分かっているのに、なぜか文章を書くとなるとこの配慮ができなくなります。
文章も地図と同じように、概要から細部へと徐々にズームインしていかないと、読者が迷子になってしまいます。
以下の文章を読んでみましょう。
- チャールズ1世騎馬像は、円形の交差点の中にあります。
- 円形の交差点は、トラファルガースクエアという広場の隣にあります。
- トラファルガースクエアは、ロンドンにあります。
1,2 と読み進めてもなかなか何の話かわからず、3になってようやくロンドンの話をしていることがわかりました。
「最終的にはロンドンの話をしていることが分かったのだからいいじゃないか」と思われるかもしれません。しかし、1,2の間、読者は迷子という苦痛を感じないといけなくなります。
概要から細部へおりていくと、読者は迷子になるという<苦痛>を感じることなく、書き手に簡単についていくことができます。
- ロンドンには、トラファルガースクエアという広場があります。
- トラファルガースクエアの隣には、円形の交差点があります。
- その円形の交差点の中に、チャールズ1世騎馬像があります。
このように、概要から入ると、読者の書かれた内容を吸収する能力は段違いに上がるのです。
結論:重要なポイントを繰り返す
この「結論」部分は、場合によっては省いても問題ありません。なぜなら、「序論」で結論や自分の立場を明確化できている方が理想的だからです。
とはいえ、私たちは結論が最後にくる文章を読み慣れています。そのような人にとって、「結論」がない文章は尻切れとんぼのような印象を与えてしまうリスクがあります。
そこで、簡潔に本論を要約した上で、ちょっと将来の話をして終わります。本論には含まれないけれども、頭の中で描いている「将来構想」などがあれば、もってこいでしょう。
文章を書くときに気をつけること
ここまで、論理的な文章構成のテンプレートと、その各構成要素について解説してきました。これに沿って書くだけで、論理的な文章を書き上げることができるでしょう。
文章を書くときに、いくつかの注意点を守るだけで一気に文章が読みやすくなります。
はっきりと言い切る姿勢
私たちには「ぼかしことば」を挿入する言語習慣が深く染み付いていて、相当注意を凝らさなければ、はっきり言い切る文書を書くことはできません。ちょっと油断すると、すぐに「〜という風に思います」なんて表現が飛び出てきます。「風」に「思う」だなんて、どれだけ自信がないんだと外国人からは思われることでしょう。
事実、日本文学研究のドナルド・キーン氏は以下のように述べています。
「鮮明でない言葉はフランス語ではない」という言葉があるが、日本語の場合、「はっきりした表現は日本語ではない」と言えるのではないか。
木下是雄「理科系の作文技術」、中公新書
「理科系の作文技術」を書いた木下是雄氏は、こう言います。
必要なのは基本的な姿勢を確立することであって、はっきり言い切るために特別な表現技術の勉強がいるわけではない。
すなわち、もうこれははっきりとしたものいいができるかどうかという覚悟の問題であって、技術の問題ではないということです。
事実と意見
「事実と意見は分けて書きなさい」
これは、社会人になったときに、まず教わる文章のルールではないでしょうか。
しかし、何が<事実>で、何が<意見>なのかはあまり教えてくれる人はいません。
事実
<事実>は、証拠をあげて裏付けすることのできるものです。
事実を書くときは、以下を自問自答します。
- その<事実>は、書く必要があるか?
- その<事実>は、ぼかした表現に逃げずに、明確にされているか?
- <事実>を記述する文はできるだけ名詞と動詞のみで書く。
主観に依存する修飾語を混入させない。
意見
一方の<意見>ですが、以下のような幅広い概念を含みます。
意見を記述する際は, <私の意見>であることを明確にするのが礼儀です。特に日本語は主語(私は〜、など)を省くことができる稀有な言語であるため、混同が起きやすい状況にあります。
文は短く
文章は短いほどわかりやすいものです。以下の文章を見てみましょう。
チャールズ1世騎馬像は、立派な銅像だという風に思われます
「風」に「思う」だけでなく、「思われる」という受け身文を使うことによって、「読者を煙に巻きたい」という書き手の自信のなさが透けるように見えます。
「〜といったように」「〜という風に」「〜と思われる」。曖昧な表現が、一文をどんどんと長くしていきます。
文章はできるだけ短く書きましょう。一文に盛り込むことができるのは、一つのテーマに絞ります。複数テーマにわたるようなら、潔く文や段落を分けます。
論理的な文章を学ぶためにおすすめの本
最後に、論理的な文章を学ぶにあたり、おすすめの本をご紹介します。
理科系の作文技術
まずは、理科系の作文技術(木下是雄)をおすすめします。「理科系の」作文技術とありますが、理科系でなくとも、文系でも、ビジネスマンでも、ブロガーでも通用する汎用的な作文技術を学ぶことができます。
新書サイズで手軽に読めるのみならず、「作文技術」を指南する本だけあって、非常にロジカルな文体で書かれているため読みやすさも抜群です。
そして、何より無駄がないため、まずはこれを一冊読んでしまうことを強くおすすめします。
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